■ 不思議な生き物 ■

どこの台所にもゴキブリはいるし、南米の台所にもいる。こっちでもゴキブリは「うわ気持ち悪い」と嫌われている生き物である。ゴキブリなんて大した実害があるわけでもないし、なんでこんなに嫌われているのかといったら「その存在そのものが気持ち悪い」からだ。ただ単に気持ち悪い、それだけで何千年も前からゴキブリは嫌われてきた。蝿とか蛇とか蠍とか、実害のある生き物は邪神とか悪神に神格化されているケースがあるが、ゴキブリが神格化された神というのは聞いたことがない。そりゃ単に台所を這いずり回ってたまに姿を見られると「うわ気持ち悪い」と叩き潰されるだけの生き物なんて、神格化しても仕方がない。

ではもし、彼らが人の姿を持ったらどうなるだろうか。これまで何千年間も人類に気持ち悪いと叩き潰されるだけだった生き物が、人の姿を持って人の言葉を喋れるようになったら、どういう行動を開始するだろうか。数の上では相当な量がいるから、これは一大事である。まず間違いなく、人類に対して報復を開始するはずである。

ルサンチマンというのは生命力の源として途方もなく巨大で、それを正の方向へ向けられればものすごい意志に転化することが出来るが、大抵の者はそれを負の方向へ向けてしまうので、結局世の中を悪くすることにしか使えない。これまでの人類史なんて概ねその繰り返しであって、「迫害されてきた者」「迫害されてきたと主張する者」がトランプの大富豪における「かくめい」みたいに立場を逆転させると、全く同じことを始める。この繰り返しである。

ではゴキブリが人の姿を持ち、同じく人の姿を持った蛇と一緒になって、人類に報復を始めたらどうなるだろうか。結果は現状である。彼らの特徴として「1+1=0になる」ということが挙げられる。とても不思議だが、彼らにとってプラスの価値がある物はマイナスの価値を持つ。つまり絶対値の分だけ価値が正反対になる。白い物が黒く見え、綺麗な物が汚く見える。これは脳味噌の性能とかいう問題ではない。性能が高いか低いかではなく、全く異なる構造というか異なるロジックにより成り立っている。真面目に計算しても1+1=2にならない不思議な生き物なのだ。心の底から「AとBは正しくCとDは間違い」だと思っているのに、実際には「CとDをしなさい、AとBはやってはいけません」と本気で言っていたりする。実に摩訶不思議である。HALにすら理解出来まい。

当たり前だが、矛盾した事を同時に考えるのは不可能であり、もしそういう人間がいたら頭が狂っているのだが、つまり普通の人は「矛盾したことを同時に考えろ」と言われたら、思考が停止してしまう。よって人々に何か知られたくない事があったら、例えば彼らが自分たちについて人々に知られたくない事があったら、矛盾した事を同時に考えさせればいい。そうすれば人々は結論に至れないので、結果的に彼らの事を知ることは出来ない。具体例を挙げると、「その事を考えるな」と言うのと同時に「その事を考えろ」と言う、そういう教育とかのことである。

こういう生き物は矛盾した事を同時に本気で考えているので、彼らの行動も言動も人類には理解出来ないし、現状として数の上で人類よりも多くまた人類に多大な怨念を抱いているため、手の付けようがない。「あれがそうしたらこうなりますよ」というのが理解出来ない生き物なので、説明をしても無駄である。実に不思議であり困った生き物だ。

そういう生き物の中でも「普通の人類」に進化し生きている者は一応いて、それなら問題無いが、多くは逆に退化しマイナスの方向へ向かい、どんどん悪くなっている。こういう連中のせいで全員が十把一絡げで同じだと見なされたりするのは実に忍びない。彼らは自分たちの理想の社会を作るためには同胞の犠牲も厭わないので、時々マッチポンプを起こすが、やはり矛盾しているので実に不思議である。

彼らと共存するのは難しいし、住み分けようにも地球以外に住める星はまだ見つかっておらず、隔離しようにも檻は壊れるかもしれないし、絶滅させるのには度々失敗してきた。よって「元の姿に戻してしまう」のが一番良い方法だと思うのだが、その方法がまだ発見されていない。よってそれを発見すれば人類史に残る偉業となろう。是非誰か実現してほしいものだ。