ここは南米、緑の大地。その真ん中にあるパラグアイ共和国。俺が生まれ育った日本はここからちょうど地球の裏側にあり、時差はちょうど12時間だ。日が沈む国に日が昇ればこちらは夜になり、日が沈む国に日が沈めばこちらは朝になる。
この国に来て1年と少し、当初はスペイン語も全くゼロの状態だったが、現在は「独りでもどうにかなる」レベルにはなった。俺は言葉は下手でも不思議とどうにかなることが多く、この辺はある意味俺の才能だと思う。人の心理を推測分析するのが俺の常ゆえ、大抵しばらく考えるといろいろわかるし、よって言葉は下手でもどうにかなることが多い。
ここに来た当初の目的からは既に離れ、現在は「さて、どうしたもんか」的な状況で適当に暗中模索しつつある状態である。ここは南米でも貧乏な国らしく、どんな感じかというと「平均月収300ドル/大学進学率2%/軍隊がジェット機を所有しているかどうか怪しい/国外へ出稼ぎに行く者多数」みたいな感じだ。つまり発展途上国そのものである。
俺が住んでいるのは首都アスンシオン市だが、海外経験の少ない俺でも「ああ途上国だなあ」と思うことは多い。例えばバンパーの外れた車やナンバーが付いてない車・バイクが普通に走っていたり、市場のエリアへ行けばたくさんの違法コピーやパチモンが売られていて、バスに乗っていると貧しい子供が物売りに来たり、そういうのはまさに途上国だ。しかしここは首都ゆえ国一番の立派な施設もたくさんあり、大通りに建っている企業のビルやショールームやショッピングセンター等、民間資本による建物は普通に立派だ(不思議なことに立派な建物ほど高さが低いが)。ただ例えばトイレに入ってみると今一詰めが甘い(物を掛けるフックが無かったり扉の立付けが悪かったり)と思うことはあり、この辺は確かに「途上国首都の立派な施設」と言えないこともない。
日本は良くも悪くも先進国で、その中でもお上の締め付けや右へならえ的な考えが強い国だと言われる。もちろんそこで生きる以上それに従うのはある意味普通で、よってそういうのが好きでない特に青年層は、現在はどんどん海外へ出て行こうとする。別に絶対的な価値観や制度なんてものは存在しないので、そこが好きでないなら別の場所へ行けばいいのだ。むしろ現代の日本のように論理性や均等性が欠けている国は、アイデンティティを重視する普通の人には住み難いので、出るのは至極当然だという気がする。
では俺はこの国に来て、適当にスペイン語を勉強しつつその他にもいくつかの試行錯誤をしているが、俺は「どこにでも面白いことは転がっている」と知っているので、面白いことをいろいろ探しながら生きている。当然途上国には途上国ならではの面白いことがいろいろある。俺のように音楽やゲームが好きならば、必然的にそっちの方へ足が向かう。
スペイン語で「海賊=pirata」なので、海賊版つまり違法コピーのCD/DVDをピラタという。そしてそれを売ってる店(露店&屋台)のことをピラテリアという。俺は「コピー」というのは芸がないのでスペイン語風に「コピア」と呼びたいが、つまりコピアCDを売ってる店をピラテリアというのだ。もしこの大陸に来る奴がいるなら基本だから覚えとけよ!
日本ではレンタル屋へ行けばいくらでもCDを借りてきてコンピュータでコピアできるが、こっちでは初めからコピアであるMYSTERIOUSなCD-R/DVD-Rが道端でたくさん売られているのだ。音楽もゲームも映画もWindows用のもいろいろある。こんなのは途上国なら至極普通の光景だし、この大陸だけの話でもなんでもない。例えばバンコクでは「違法コピーWindowsを全部取り締まったら企業の6、7割は潰れる」と言われてるそうだし、そもそも日系人だってそんなのは普通に使っているので、俺に言わせれば「別にいいじゃん」的な話だ。別に悪いともなんとも思わない。
こっちに来て思ったが、別にピラテリアでコピアCDを買おうがノーヘルでバイクに乗ってようが、そんなのは善悪とは何の関係もない。俺はこっちに来てから、せっかく南米なんだしと思いゲバラ(南米では"CHE"と呼ぶのが一般的だぜ、野郎ども!)のTシャツを着たりしてるが、別にコミュニストでもない。俺が好きなもの&嫌いなものを言っておくと、好きなのは自由で嫌いなのはファシズムだ。こういうのを客観的に考えられないアホは多いが、つまりゲバラは自由のために闘ったのでかっこいいし、ヒトラーやスターリンはファシストなのでクズだ。いくら日本を賛美していても実際には北朝鮮の子分であるファシストなんてのは、取りも直さず選民思想に染まっているクズどもだ。自身のレゾンデートルも自身の考えてることが何に由来するのかも自覚できてない奴に限って、その浅はかな思考から尊大になる。
もし社会に何らかのルールがあるとして、そのルールに全て従うこと=善であると単純に思う者がいたら、それはDONKEYだ。なぜならルールというのは普遍的なものと局所的なものがあり、前者に従うのは当然でも後者は全て正しいかどうかわからないからだ。殺人や放火や窃盗や強姦などはどこでも罪になるし普遍的な悪事だが、では「ユダヤ人は殺してもいい」とか「黒人は隔離してもいい」というルールに従うのはどうなのか、というのは、人類なら誰だってわかる自明な問いだ。そしてこういうルールを作りたがるのは、やっぱり選民思想に染まったDONKEY共だ。
ピラテリアへ行って適当に80年代メタルのコピアを買ってきて聴いたところで、そこの店員は1~2ドル儲けて俺は音楽を楽しめるのだからオールオーケーだ。スペイン語で言えばTODO BIENだ。どうせネタ元はTorrentかなんかで拾ってきたんだろうし、焼きが失敗してたら運が悪かっただけなのでまた買いなおせばいい。こういうのが途上国の醍醐味だ。うさんくせー一杯1milのジュース飲んでれば腹も丈夫になるし、たまに屁をここうとして水便が出ても洗えばいいのだ。もし食中毒になっても一週間もすれば治るし、こっちの薬は強いからよく効くぜ!
頭の腐ったファシストにはピラテリアは悪に映るだろう。しかし我々人類には「別にいいじゃん」と映る。ではどっちが正しいのかといったら、それは奴らが崇める者たちが歴史の教科書にどう書かれているか、それが答えだ。ピラタを聴こうが屋台で串焼き肉を食って腹を壊してパンツを汚そうが、捻じ曲がった十字架の立った家で黒いシャツを着て立派に振舞っているトカゲとは、その存在意義からして異なるのだ。そしてまだまだこの世界には、邪悪なトカゲどもを排除しようとする意志が存在するのだ。
そういえば先週、ピラテリアのおっさんに「他にもアジア人の客は来るのか?」と訊いたら「いや君しか来ないよ」と言ってたな。ということは俺はこの街のアジア人で一番のピラタマスターだな!現在の母語で言えば「海賊王」だな!!
というわけで、読んだこともない少年漫画の台詞の如く「海賊王に…俺はなる!!」を体現しつつある今日この頃、明日はどっちか東か西か、風の行方は誰にもわからない。ピラタマスターTYの船の名はファルコン号にしよう。どこかの星のお姫様と結婚したいからな! ミ★
