U2がスターになったのは、1987年の「ヨシュア・トゥリー」でした。あの中で「信仰」について歌い、ボン・ジョヴィやREMと同じく他バンドより一段上の存在になり、特にアメリカでの地位を絶対のものとしました。次作「Rattle and Hum」では、アメリカのルーツミュージックへの接近を図り、B.B.キングとの競演や、ブルース調の曲を収録するなどして、さらに親アメリカの姿勢を見せました。
そして次にリリースしたのがこの「アクトゥン・ベイビー」で、U2に最も勢いがあった時期にリリースされた、いわば「問題作」です。デビューしてから前2作までは順調に進化を遂げていた彼らが、テクノやデジポップへの大きな接近を見せ、1曲目のイントロを聴いただけでリスナーが思わずひっくり返りそうな変化(進化?)を遂げています。あのアメリカへの接近はどこへ行ったの?てかやればできるじゃんU2!路線が変わってもこの内容なら納得だぜ!
U2のデジロック路線はこの後の2作まで続き、結局10年の間彼らはその中で創作を行います。途中で映画「バットマン・フォーエヴァー」の主題歌を歌ったり、「ミッション・インポッシブル」のテーマ曲を担当したりしても、それはデジロック路線内での出来事であり、90年代は一貫してその路線を貫きました。2000年に発表した「All that You can't Leave Behind」で王道ロックに戻りますが、要するに90年代はU2は10年間に渡り実験(的音楽)に徹していたというわけです。(※忠告すると、あのデジロック時代の3部作のうち、「ZOOROPA」は特に特殊で実験的な作品ですから、初めてU2を聴くなら避けましょう、マジで)
1曲目の"Zoo Station"から、まさに「吸い込まれるように」楽曲は進み、途中で"One"のような売れ線バラードを挟みながら、緩急をつけて最後まで流れるU2渾身のデジロック、このアルバムを聴いて何かが弾けた、そんな印象を持っても不思議は無い!ミュージシャンとしてまさに脂の乗った絶頂期だった彼らが作り上げた、限りなく90年代の最高の一作。実験精神と楽曲のキャッチーさが両立した、デジロック中最高の一作でもあります。特に後半の内容は最高で、曲名を忘れてしまうほどに良い、っていうか曲名を覚えようと思わないほど、視聴に集中している自分がいます。
ちなみにこのアルバムからの先行シングルは、7曲目の"The Fly"でした。聴いてても「え、どれが7曲目だっけ」と思ってしまうほど目立たない曲ですが、それを最初のシングルカットにするセンス、流石です。僕が一番好きなのは"Who's Gonna Ride Your Wild Horses"です。ドラマティックに歌い上げるボノの歌声がたまらない!最後は"Love is Blindness"ですが、悲しく切なく歌うボノもいい。
とにかくこれはデジロック史上最高の1枚(の一つ)です。U2の全タイトルから最初に聴くべきはどれか、と問われたら、これを挙げてもおかしくない。U2の全アルバム中最も実験的で、キャッチーで、力強く切ない、このアクトゥン・ベイビーにはそんな要素が溢れています。必聴!!


