「新月」
地球という星があり、昼には空に太陽が、夜には空に月が昇っていた。
それぞれは天の高い高いところで光を放ち、地球の大地を照らしていた。それらは光の源だった。
太陽には太陽の神が、月には月の神がいた。

ある日、太陽の神と月の神は話していた。
「大地を本当に照らすことができるのは私だけだ。おまえがどんなに頑張っても、私の輝きには敵うまい」
「何を言う。私の輝きは旅人を照らし道案内さえする。本当に大地が求めているのは私の輝きだ」
お互いに自分の輝きを自慢する二人だったが、片方が昼を照らしもう片方が夜を照らす。彼らの論争にケリはつかなかった。

月の神は言った。「では、二人のうちどちらが本当の光の源であるか、戦って勝負しよう」
太陽の神は言った。「面白い。望むところだ。私が本物であると証明してやろう」
そうして二人の神の戦いが始まった。

戦いは長時間に及んだが、ついに月の神の剣が太陽の神の首をはねた。
太陽の神は死に、戦いは月の神の勝利に終わった。
月の神は喜びいさんだ。「これで私はたった一つの光の源になった。全ての人々は、その全ての賛辞を私に贈るだろう。私は唯一の光となったのだ」

だが、太陽の神が死んだ瞬間、世は闇に包まれた。今が昼なのか夜なのかわからないほど、突然世は暗闇に包まれた。太陽も月も光を放たない暗闇が世を包んだ。
月の神は狼狽した。「何故だ。何故私の体から光が消えたのだ」

光の源である太陽が失われた世界。そこには月の光すら無い。極わずかな星光しか照らすものはなかった。そう、月の神は、その輝きが太陽の光の反射によるものだと知らなかったのだ。
月の神は太陽を殺すことにより、自らの輝きすら失った。大地は永遠の漆黒に包まれた。しかし誰もその理由を知らない。月が天の真上にいても、誰も気付くものはいない。

月は永遠の新月となった。照らしてくれるものは、もう、いない。